「うちの子、やる気がないわけじゃないと思うんだけど……」
そんなふうに感じたことはありませんか?
親から見ると課題が見えているのに、本人は「ちゃんとやっている」と思っている。
注意すると反発する。
何度話しても同じことを繰り返す。
息子(ラグ男)は中学3年生。クラブチームでラグビーをしています。
実は先日、ラグ男が参加した強豪校の部活体験で、まさにそんな出来事がありました。
これは、同じ学校への2回目の体験参加でした。1回目の様子は前回の記事に書いていますが、声が小さい、やる気が伝わらない——そんな姿に親としてかなり考えさせられた一日でした。それでもラグ男は「もう一度行きたい」と言い、再びチャンスをいただくことになりました。
最初は「覚悟が足りない」「やる気が見えない」と感じていた私たちでしたが、家族で話し合う中で見えてきたのは別の課題でした。
今回は、強豪校の体験参加を通して親子で向き合った「できているつもり」の怖さについて書いてみたいと思います。
2回目の強豪校体験

今回の参加も、個人でお願いした部活体験です。
前回からの課題をどれだけ克服できているか。
そこに注目しながら、見守ることにしました。
今回は足首のケガを抱えた状態だった

実は、ラグ男はこの5日前に足首を捻挫して、ダッシュすると痛みが走る程度の足の状態で参加していました。
ケガを治してから改めてお願いするという選択肢もありました。
それでも本人は、
「参加したい」
と言いました。
だから私たちは一つだけ約束しました。
参加するのであれば、ケガを言い訳にしないこと。
もちろん無理をしろという意味ではありません。
ラグビーにケガはつきものです。
だからこそ、自分で参加を選んだ以上、できる範囲で精一杯やる。
それだけは忘れないでほしいと思っていました。
約束したのに、また同じだった

今回の目標はとてもシンプルでした。
「とにかくグラウンドの端まで届くような、大きな声で挨拶をすること」
技術はすぐには変わりません。
でも挨拶や返事は今すぐできる。
だからまずはそこを意識してほしいと思っていました。
最初の自己紹介。
正直に言うと、私はがっかりしました。
前回より少しは良くなったのかもしれません。
でも、グラウンドの端まで届くような声ではありませんでした。
午前練習終了後の挨拶も同じでした。
「ありがとうございました!」
そんな元気な声を期待していたのですが、私にはそうは見えませんでした。
私たちが見たかったのは30本完走ではない

午後はウエイトトレーニングの後、坂道ダッシュがありました。
30本です。
監督からは、
「無理しなくていいよ」
という言葉もありました。
ラグ男は15本でやめました。
そして最後の30本目だけ再び参加しました。
帰宅後、その理由を聞くと、
「足を悪化させたくなかった」
という答えでした。
さらに、
「来週のもうひとつの学校の体験会に影響が出たら困ると思った」
とも言いました。
でも実は、その体験会の日程を本人は勘違いしていました。
私は思わず聞いてしまいました。
「今日体験させてもらった、県外の強豪校が第一希望なんじゃなかったの?」
ラグ男は、
「うん、第一希望」
と答えました。
だからこそ、私たちには理解できませんでした。
早起きして何時間もかけて来た。
自分で参加したいと言った。
目の前に第一希望の学校がある。
それなのに、目の前のチャンスより先のことを考えて、自分でブレーキをかけてしまう。
私たちが見たかったのは30本完走ではありません。
歩いてもいい。
休みながらでもいい。
それでも最後までがむしゃらに食らいつこうとする姿でした。
実際、その場には膝が痛いと言いながら最後までやり切る選手もいました。
苦しくても声を出し続け、周りを鼓舞している選手もいました。
こういう選手たちが強くなっていけるんだ。
だからこそ、
「なぜ自分でブレーキをかけてしまうんだろう」
「なぜ自分で上限を決めてしまうんだろう」
という思いが残りました。
一番驚いたのは、その後の会話だった
帰宅後、ラグ男に聞きました。
「自己紹介の声、どうだったと思う?」
返ってきた答えは、
「できていたと思う」
でした。
私は驚きました。
なぜなら、私たちから見れば全くそうは見えなかったからです。
でもラグ男は嘘をついているわけではありません。
本当にそう思っていたのです。
一番怖いのは「できないこと」ではない

そのとき私は気づきました。
一番怖いのは、
できないことではなく、できていると思い込むこと。
できていないと分かっていれば改善できます。
でも、自分ではできていると思っていると改善しようがありません。
そして指摘されると、
「ちゃんとやってる!」
となる。
実はラグ男には、そういうところがあります。
本人は逃げているつもりはない。
本人は頑張っているつもり。
だから指摘されると納得できない。
でも、それでは成長が止まってしまいます。
最近、職場でも同じような場面を見た

実は最近、職場でも似たような出来事がありました。
研修中にメモを取らず、自分ではできていると思っている人がいます。
ある日、期限までに終わらせる仕事が間に合いそうになくなりました。
同僚が、
「間に合わないなら早く相談して」
と言いました。
すると返ってきた言葉は、
「こっちだって一生懸命やってるんだ!」
でした。
私はそのとき思いました。
一生懸命やることは大事だし、仕事なんだから一生懸命やって当たり前です。
でも、それだけでは足りない。
本当に成長する人は、
「自分ではできていると思っていたけど、そう見えていなかったんだな」
と一度立ち止まり、まず非を認めることができる人なんだと思います。
私たちも反省した

帰宅後、パパと話しました。
もしかしたら私たちは、ラグ男の可能性を信じるあまり、お膳立てをしすぎていたのかもしれません。
学校探し。
体験参加の申し込み。
送迎。
情報収集。
気づけば親が先回りしていました。
本人が動く前に、私たちが道を作ってしまっていたのです。
その結果、主体性を育てる機会を奪っていた部分もあったのかもしれません。
そんな日に届いた県選抜選出の連絡

タイミングが良いのか悪いのか。
その日の夜、春季県選抜選出の連絡が届きました。
参加意思の確認です。
返信期限は3日後。
実はその日、パパと私は「しばらくこちらからは何も言わず、本人がどう動くか見てみよう。そして本人が自分から行動を始めなければ、強豪校進学はやめさせよう。」と話していました。
そんな矢先の連絡でした。
グループチャットで届いたため、ラグ男も内容を知りました。
私たちは、作戦を変更せざるを得なくなりました。(笑)
パパが聞きました。
「どうするんだ?」
ラグ男は間髪入れず、
「行きたい!」
と答えました。
その瞬間、ほんの少しだけ表情が緩んだように見えました。
正直、その日の私はかなりがっかりしていました。
何度も同じことを伝えているのに、なぜ伝わらないんだろう。
この先、本当に大丈夫なんだろうか。
そんなことばかり考えていました。
でも、その表情を見たとき、
「ああ、この子はラグビーを続けたいんだな」
と思いました。
県選抜に選ばれたことが素直に嬉しかったのでしょう。
そして何より、
「行きたい!」
と自分の意思で答えたことが嬉しかったのです。
だったら、あとは行動です。
辛いからやめる。
痛いから逃げる。
言い訳を探す。
そんな自分から少しずつ卒業していかなければいけない。
そして、自分で決めたことに責任を持つ。
主体的に動く。
その話をその場で家族でしました。
パパも言いました。
「だったら一緒にやろう」
パパは現役消防士です。
正直、パパとのトレーニングはかなりきついです(笑)。
だから今までも、
「今日は自分で走った」
「今日は勉強したい」
そんな理由でパパとのトレーニングを避けてきたこともありました。
でも今回は違いました。
少なくとも、その日は逃げませんでした。
これから本当に変われるのかは分かりません。
口で言うのは簡単です。
続けるのはもっと難しい。
でも私は、県選抜に選ばれたこと以上に、自分の課題と向き合おうとしたことに期待したいと思っています。
私たちが伝えたいのは「頑張れ」じゃない

私たちがラグ男に伝えたかったのは、
「もっと頑張れ」
ではありません。
「もっと走れ」
でもありません。
本当に伝えたかったのは、
自分を客観的に見る力を持ってほしい
ということでした。
注意されたとき、
「やってる」
で終わるのではなく、
「そう見えたんだな」
と注意されたことを自分で受け入れて、一度立ち止まる。
そして、
「やったつもりだったけど、そうじゃなかったんだ。」
「じゃあ次はどうしてみよう」
と考える。
それができる人は、きっとどこへ行っても成長できます。
ラグビーでも。
勉強でも。
社会に出てからも。
今回の体験で私たち親子が向き合ったのは、強豪校のレベルではありませんでした。
「できているつもり」という、自分では気づきにくい課題でした。
そして、その課題に気づけたことこそが、今回一番の収穫だったのかもしれません。

