消防隊員として働いていたころ、毎年5月になると「暑熱順化訓練」が始まっていました。
最初はウインドブレーカーを着て走る。慣れてきたら防火衣を着て走る。1〜2ヶ月かけて、じっくり体を暑さに慣らしていくんです。
なぜそこまでするのか。それは、慣れていない体に突然の暑さは命取りになるからです。
ある夏の夜、自動火災報知設備のベルが鳴っているという通報で出場したことがありました。防火衣を着て現場を走り回り、その場では「平気」だった。でも一段落してふと我に返ったとき——目がチカチカして、ふら〜っとなったんです。
あのとき学んだのは、「平気だった」が一番危ないということ。
ラグビーのグラウンドも、消防の現場も、同じことが起きています。この記事では、現場で経験したことをもとに、ラグビー少年の熱中症対策を本気で解説します。
「平気だった」が一番危ない——私が経験したこと

熱中症で怖いのは、「その場では平気だった」というケースです。
あの夏の夜、火災ではなかったけれど、蒸し暑い中を防火衣で走り回った。
着ているだけで汗が止まらない。でも、緊張している間は体がアドレナリンで動いていた。
危険を感じたのは、緊張が解けたあとでした。
消防の現場でも、ラグビーのグラウンドでも、これは同じです。
試合後・ハーフタイム明けが特に危ない
子どもたちが熱中症になりやすいのは、実は試合中よりも試合後やハーフタイム明けです。
試合中は興奮と集中で体が動いている。でも笛が鳴って一息ついたとき、急に体の異変に気づく
——これが現場で見てきたパターンです。
親として気をつけたいのはここ。
- 試合が終わって「お疲れ!」と声をかけるとき、顔色と汗の量を必ずチェック
- 「大丈夫?」と聞いて「大丈夫」と答えても、見た目で判断する
- ハーフタイムは座らせて、必ず水分を取らせる
うちのチームに、人見知りでおとなしい子がいます。
「大丈夫?」と聞くと、いつも「大丈夫」としか返ってこない。
でも顔は真っ赤、歩き方もフラフラ——そんな場面が実際にありました。
本人は「大丈夫」のつもりだったかもしれない。でも体は正直です。
だからうちのチームでは、自分の子だけじゃなく、みんなでみんなの子を気にかけるようにしています。
「あの子、顔色悪くない?」「さっきからあまり飲んでないよね」——そんな声かけが、大事な場面で誰かを助けることになると思っています。
子どもは「大丈夫」と言いがちです。特にラグビーをやっている子は根性がある子が多い。でもその「大丈夫」を信じすぎないのが、親の役目だと思っています。
焦りが命取り——現場で見た熱中症

消防の現場で、こんなことがありました。
隊員たちが訓練の途中で出場指令が入りました。
隊長から「水飲んでいけよ」と声もかかっていた。
時間もあった。
それでも、そのうちの一人の隊員は、飲まずに出場してしまったんです。
「遅れちゃいけない」という焦りと「別に大丈夫だろう」という自己判断。その結果、現場で活動中に熱中症で倒れてしまいました。
そしてその後が深刻でした。倒れた隊員の対応を、他の隊員がしなければならなくなった。本来やるべき現場活動に支障をきたしてしまったんです。
自分が倒れることで、チームに穴が開く。
「水を飲む時間があった」のに飲まなかった、たったそれだけのことが引き起こした結果です。
ラグビーで置き換えると
これ、試合前のアップ中や連戦の合間に起きやすいパターンと全く同じです。
- アップで汗をかいた
- キックオフまで時間がない気がした
- 「今さら飲んでも」と思って水を取らなかった
熱中症で倒れれば、自分がプレーできなくなるだけじゃない。チームに迷惑をかけることになります。
「自分のために飲む」が難しければ、「チームのために飲む」——そう伝えると、子どもに刺さることがあります。
水分補給は「飲みたいとき」ではなく、「飲めるとき」に飲む。
親がいる場合は、飲めるタイミングで必ず声をかけてあげてください。「飲んでいけよ」のひと言が、誰かを——そしてチームを——守ることになります。
親が知っておくべき「危ないサイン」

「大丈夫?」と聞いて「大丈夫」と返ってきても、安心しないでください。
子どもは、特にスポーツを頑張っている子ほど、しんどくても「大丈夫」と言いがちです。
弱音を吐くことへの恥ずかしさ、試合に出たい気持ち、チームに迷惑をかけたくない気持ち——いろんな感情が「大丈夫」の一言に詰まっています。
だから親は、言葉ではなく体を見るようにしましょう。
こんなサインが出たら要注意
- 顔が真っ赤、または逆に真っ青になっている
- 汗が異常に多い、または急に汗が止まった
- 歩き方がフラフラしている
- 動きがいつもより明らかに遅い、ぼんやりしている
- 呼びかけへの反応が鈍い
特に「汗が止まった」は危険信号です。汗をかけなくなった体は、熱を外に逃がせなくなっている状態。見た目に涼しそうに見えても、体の中では体温が急上昇しています。
重症度の目安を知っておく
熱中症には重症度があります。親として最低限、これだけは知っておいてほしい。
軽症——めまい、立ちくらみ、足がつる。涼しい場所で休ませて水分補給。
中等症——頭痛、吐き気、体がだるくて動けない。自力で水が飲めるなら経口補水液を。改善しなければ病院へ。
重症——意識がおかしい、呼びかけに反応しない、けいれん。すぐ119番。躊躇しないで。
「様子を見よう」で手遅れになるのが熱中症の怖さです。迷ったら、動く。
今日からできる対策——親としてできる準備

知識があっても、準備がなければ動けません。ここでは実際に私がやっていること、使っているものを紹介します。
暑熱順化を意識した春の過ごし方
4〜5月の練習を「まだ涼しいから大丈夫」と油断しないこと。
この時期の練習こそが、夏の体を作ります。
- 春先から練習を休みすぎない
- 少し汗ばむくらいの強度で体を動かす習慣をつける
- 梅雨明け・連休明けは特に注意(暑熱順化がリセットされやすい)
水分補給は「仕組み」で習慣にする
「飲みなさい」と言い続けるのは限界があります。飲まざるを得ない環境を作る方が現実的。
- 練習前に必ず水筒を確認する(空じゃないか、量は足りているか)
- 「のどが渇いたら飲む」ではなく、時間や休憩のタイミングで必ず飲むよう声かけ
- 水筒の中身は薄めのスポーツドリンクが飲みやすくておすすめ
これは持っておきたい!熱中症対策グッズ
実際に使って「これはいい」と思ったものだけ紹介します。
✅ スカイウォーター(クラシエ/粉末スポーツドリンク)
水に溶かすだけで使える粉末タイプのスポーツドリンク。粉末だから、濃さも自分好みに調節できます。1袋で1リットル分、1箱に10袋入りなのでたっぷり使えてコスパも抜群。かさばらずに持ち運べるので、遠征や練習に最適です。
電解質をすばやく補給できる設計で、スポーツや暑い環境での水分補給にぴったり。グレープフルーツ・グレープ・レモンの3種類から選べます。濃さも自分で調整できるのもうれしいポイント。水筒に常備しておくだけでOK。
✅ 遮熱ミスト(MIRAKIREI)
スパイクやヘッドキャップにシュッとするだけで遮熱できるミスト。遮熱率55%で、ひんやりメントール配合・UPF50+・パラベンフリー。国産米のもみ殻から作った植物由来成分入りなので、子どもにも安心して使えます。80mlとコンパクトで、バッグにそのまま入れておけるサイズ感も◎。
✅ SUO RING クールリング(SUO公式/日本製)
28℃以下で自然に凍結して首元を冷やすネッククーラー。電池も充電も不要なので、グラウンドでそのまま使えます。PCM素材採用で常温でも約30〜45分、冷蔵庫で冷やせば最大70分の冷感が続く。S〜LLの4サイズ・30色以上展開で、子どもから大人まで家族全員で使えます。2,750円〜とコスパも◎。ベンチで待機中の子にも、観戦中の親にもおすすめ。
✅ 塩分タブレット
水分と一緒に塩分を補給。水筒の横に常備しておくだけでOK。
✅ 氷のう
アイシングにも熱中症の応急処置にも使える必需品。うちはノーブランドのものを使っていますが、定番のミズノや、ママ友に勧められて次は試してみたいPeacockの魔法瓶ホルダー付きが人気です。100均でも手に入るので、まず1つ持っておくだけでいざというときの安心感が違います。
応急処置については前の記事で詳しくまとめています。
👉【保存版】ラグビー少年とママのための熱中症対策
まとめ:消防の現場で学んだことは、グラウンドでも生きる

消防隊員が毎年春から暑熱順化を始めるのは、夏の現場で命を守るためです。
段階を踏んで体を慣らす。水分は飲めるときに飲む。仲間の異変に気づく。
これは全部、ラグビーのグラウンドでも同じことが言えます。
私が現場で見てきた熱中症は、どれも「防げた」ものでした。知識があれば、準備があれば、声かけがあれば——そう思うケースばかりです。
子どもたちは「大丈夫」と言います。でも体は正直です。言葉じゃなく体を見てください。
そして「飲んでいけよ」のひと言を、躊躇わずにかけてあげてください。
この夏、グラウンドで倒れる子が一人でも減りますように。
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